エッセイ入選


2001年エッセイ・入選

『あなたへの感謝状』

兵庫県 上田知左子さん
47歳(主婦)

 私の生命保険さま
昨年はたいへんお世話になりました。 あなたとの出会いは六年前。私が四十二歳の時でした。叔母の死が取り持つ縁でした。そして昨年、職場の人間ドックで発見された乳がん。早期ながら右乳房に二カ所もあり、切除しました。鼻柱の強い私は内心、告知後の冷静さを自惚れていました。が、何の事はない。入院の三日前に愛車で接触事故。じゅうぶん動揺していたんですね。
 そんな小心者の私に闘う気力を呼び起してくれたのは家族をはじめとする周囲の温い愛情と励し、それにあなたの経済的支援でした。といってもあなたには必要最小限の保障しか付けておらず、契約内容はきっと不満だったでしょうね。そんなあなたなのに健気にも予期せぬ、まとまった出費を埋めるべくよく頑張ってくれました。あなたとご縁が結べてよかった。安堵と感謝の気持ちで一杯です。
 『がん』が不治の病でなくなりつつある現在、あなたは小さいながらもいつも私を見守り、いざの時のために身構えてくれている心強い味方です。
 遺伝子治療など目覚ましい進歩を遂げている『がん』治療戦線。それ故、丸腰で戦いを挑むのは無謀であり無知であると私は思うのです。『がん』の場合、生命保険という戦闘準備も予防策の一つ。それを教えてくれたのもまた、あなたでした。
 もうすぐ術後一年。ありがとう。そしてこれからもよろしく。私からあなたに今、心からの感謝状を送ります。