エッセイ入選


2001年エッセイ・入選

『生命保険の受取人』

徳島県 米田優子さん
35歳(主婦)

  「生命保険の受取人って、やっぱり奥さんよなぁ」職場の朝の更衣室、新婚ホヤホヤの彼女が私に尋ねてきたことがある。
 「ほんなん、当たり前でえ」と私は答えたけれど、
 「ほなけど、変更してって何となく言いにくいんよなぁ」
 その時、何で言いにくいのだろうと首を傾けたけれど、自分も同じ立場に立った時、ようやく彼女の気持ちが理解できた。
 何て主人に切り出そうか。「あれー、受取人が奥さんになってないー」って軽く言おうか。それとも真顔ではっきり言おうか。はたまた主人が自分で気づくまで待とうかなぁ、何て色々考えている自分が、何となくおかしい。
 「結婚したのだから、受取人を私に変えてね」って普通に言えば済むことだと思っていても、何もないその言葉の裏を探られそうで、言いにくくなるのだろうか。
 それで、少し作戦を立ててみた。まず、今の生命保険を二人で見直すことにした。その見直しの中で、さりげなく言うことにした。それならあまり意識せず、サラッと言えると思ったからだが、生命保険に対する二人の考え方の違いに、大いに語り合い主人の思いを知ることが出来て嬉しかった。
 受取人が妻となり、生命保険について話し合えたとき、夫婦の絆が強まったように感じた。