エッセイ入選


2001年エッセイ・入選

『幸福な日々』

佐賀県 原 千晴さん
26歳(会社員)

  何故か続くときは続くものですね、何事も。
 私の場合、続いたのは「幸福な日々」の方ではなく、どちらかというと「辛い日々」の方でした。と言っても不幸自慢するほどでもなく、ほんのいっとき「もう、疲れちゃった」なんて、溜息まじりに地面をにらみつける程度の「辛い」だったわけですが。
 あと一カ月でお腹の赤ちゃんも誕生、という二月のある日、夫が事故に遭いました。幸い軽症で十日間の入院で無事退院。と、言ってしまえば何ということもないのですが、この十日間毎日の病院通い、お見舞いの方の接待(?)で正直、私は消耗してしまいました。「もう、ダメ」と思ったころ、夫が退院、急いで里帰りすることができました。
「これでゆっくり休める」  そんなに甘くはないですね。「おばあちゃん、もうダメだって」祖母、他界。実家での葬式で、ますます疲労。
  「あとは、産むだけ。そう、産むだけだ」夫に続き祖母が主役だった私の臨月ライフ、今度は私の番ね。
 「さかご、なおりませんね」
 帝王切開で無事、長男を出産。息子の泣き声に軽い疲労を感じながらも「幸福な日々」を迎えることができたある日、「保険おりたよ」と夫が笑顔で帰宅してきました。入院費よりも多少多めの給付金に、これまでの疲れはどこへやら。子供も元気、家庭も円満。「幸福な日々」が続きますように。