エッセイ入選


2001年エッセイ・入選

『婚約指輪?』

大分県 椎原理恵さん
28歳(主婦)

 給料の三カ月分とは言わないけれども、やっぱりあこがれる立爪ダイヤ。「もしかして婚約指輪?」なんてまわりにさわがれて……なんだかんだいっても女の子の夢である。
 二十四回目の誕生日のことである。突然彼が訪ねてきたからびっくり。今までは、クリスマスも誕生日もなんのそのという付き合いだったのに。少しは気にしてきたようだ。
 とりあえず部屋に入る。けれど別にプレゼントがでるわけでもない。いったい何しにきたんだ。とそろそろしびれがきれる。
 と、その時茶色の封筒を彼が取り出した。みるとその中には保険証券が入っていた。もちろん名義は彼である。貯金もまともにしないし、いつも金がない。と言っていたのでまさか保険なんてかけているとは正直驚いた。 「就職してからずっとかけてたんだけど……」 「ここの受取人になってくれない?」 そういったまま黙っている。つまり死んじゃったりしたときにお金をもらえるってことは……つまり……そういうことだよね?
 全くのいきあたりばったりの生活を送っていたような彼が、きちんと将来見こして保険に入っていたのに感動。で、おもわず即答した。
 そしてあっという間に五年。もうすぐ母親になる。そういえば婚約指輪もらっていなかった気がするんだけど……。
私の夢は?……
まあいいかっ。