エッセイ入選


1997年エッセイ・入選

『心のサポーター』

山口県 有馬奈津子さん
28歳 (会社員)


  「病気より事故よね。私が死んだら保険金でマンション買って、残りで細々と暮らしてね」 「毎日仕事行ってストレス溜めて、嫌な思いするよりーカ月位入院して、簡単な手術した方が休めるし、保障あるし楽よね」
 不謹慎な話だが、時々夕食の食卓での話題になる。28才、バツイチ、子供1。無職で還暦の母と3人暮し。正直言って生活は楽ではない。 一応、大黒柱の私。何かあっても困らない程度の保険に入っている。会社のこと、子供のことで行き詰まると弱気になってよからぬことを考える。
 しっかりしろ私。大黒柱が折れたら家も壊れてしまう。会社には助けてくれる仲間がいる。 叱っても叱っても「お母さんがいい」と言って布団にもぐりこんでくる子供がいる。いつ生命保険の御世話になるかわからないけれど、できるだけ御遠慮しておこう。
 御守りのつもりでとセールスの人は言うけれど、見えないところで私を叱咤激励する私だけのサポーターであって欲しい。そしてどうしても困った時、私を母を子供を支えてくれる礎となって欲しい。
 安心があるから頑張れる。勝手なことばかり言うけれど、今しばらくは静かなサポーターとして暖かいエールを私におくっていて欲しい。