エッセイ優秀賞


1997年エッセイ・優秀賞

『お父さんの変身』

秋田県 鈴木貞子さん
45歳 (会社員)


  長女の誕生と同時に新米パパになった記念にと、こども保険に加入したり、家族の為にと重点保障の養老保険に加入したりで、とても子煩悩で家庭的でやさしいお父さんでした。ところが元気が取柄と言っていた人が、「歯を磨くと吐き気がして困る」と言うので、無理やり検査を受けさせたところ、末期の胃ガンであと半年の命と宣告され、二度の入退院の後、35才の若さで他界しました。私33才、長女10才、長男5才の春の事でした。
 さてこれからどうしたら良いものかと悩み抜いた結果、衣食は私が働く事でどうにかなる。と決め込み、社宅を出る為に、死亡保険金の全額をドーンと支払って、実家のそばに中古の家を購入しました。母子三人のスタートの始まりで、この日からお父さんが「家」に変身したのです。
 専業主婦から急に社会に出るのは辛い事も多く、家に着くとホッとしました。いつも「そばで見守ってるから頑張れ」と言ってる様で不思議と元気が出ました。
 お父さんの家族を大切に想う心が、生命保険への加入となり、亡くなった後も「家」となって私達を守ってくれています。姿なき影武者のようにいつもみんなを支えてくれる愛の形が、生命保険であると13年経った今も感謝しております。

寸評
審査員・玉村豊男
 これも素敵な話ですね。人生の不幸に見舞われたときの、きっぱりとした覚悟と勇気ある決断が見事です。その再スタートを、包み込むような愛情で見守る父なる家。辛い仕事から家に帰ったとき、ひとりごとのように亡き夫に話しかける姿が目に浮かびます。