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ニュースリリース



生命保険協会長就任にあたって(所信)

平成22年7月16日

社団法人 生命保険協会
会長  渡邉光一郎

 わが国の65歳以上人口の総人口に占める割合は昨年末で22.8%に達し、過去最高を更新しました。平均寿命が伸びる一方で合計特殊出生率は低水準で推移しており、世界に例をみない少子高齢化の進展は、本格的な人口減少社会を到来させようとしています。

 少子高齢化の進展による人口構造の変化は、国民生活に大きな影響を与えるとともに、社会保障制度の持続を困難とすることが懸念されています。例えば、今後約50年間に、生産年齢人口は2005年度比でおおよそ半数程度になり、中高齢者の単身世帯の割合は更に上昇すると指摘されています。生産年齢人口の減少は、消費市場の縮小をもたらし、社会保障制度の持続可能性を困難とする要因となります。また、単身世帯においては世帯員相互の支援を期待しにくく、単身世帯の割合の上昇は、国民生活のスタイルそのものを変化させる要因となります。

 多くの方が指摘するように、少子高齢化・人口減少のトレンドは、今後も継続すると思われます。しかし、社会経済や国民生活は人口構造だけで決まるものではありません。変化に対する的確な対応、即ちこれらのトレンドを正確に認識し、それにふさわしい社会の実現を目指すこと、或いは少子化の潮流の緩和・解消を目指すこと等により、必ずや豊かな国民生活が確保されると確信しております。

 生命保険事業には、国民生活の安定を支える社会保障システムの一翼を担うことにより、その社会的役割と責任を果たす責務があります。少子高齢化の進展により、公的保障を補完する生命保険の重要性が益々高まるなか、生命保険に対する信頼は、より一層確かなものでなければなりません。

 また、今後、国民一人ひとりの自助努力の重要性が増していくなか、本年3月、所得税法が改正され、当会の長年の要望である生命保険料控除の拡充が実現いたしました。生命保険文化センターが実施した調査では、約65%の方が生活を切りつめてでも私的な生活保障の準備が必要であると感じる一方で、例えば約75%の方が、老後保障・介護保障について充足感を感じられていません。今般の税制改正がこうした方への支援となることを期待しております。

 生命保険は相互扶助の仕組みに基づく生活保障の手段であり、少子高齢化・人口減少の進展による社会経済・国民生活一般に対する懸念は、生命保険事業そのものに対する懸念でもあります。生命保険協会としても、こうした環境下における生命保険の在り方を検討し、率先して対応に取り組む必要があります。

 生命保険事業に課せられた社会的役割と責任を果たし、現在および将来にわたり、国民の皆様のご期待に応えるため、今後1年間、以下の3つの課題に重点的に取り組んでまいる所存です。

 

1.消費者の目線による対話の機会の充実

 生命保険は、お客さまの生活における様々なリスクに備える商品です。しかしながら、お客さまが、どのようなリスクへの備えを必要とするかは、お客さま一人ひとりの生活によって異なります。それゆえ、お客さまの意向を十分に踏まえた事業が営まれなければなりません。また、同じお客さまにおかれましても、ライフサイクルや時代の移り変わりによって生命保険に求めるニーズや期待も変化していきます。少子高齢化の進展と人口減少により社会が変化する中、生命保険に対する消費者のニーズや期待がどのように変化するかを感じ取り、消費者の意向を経営に生かしていくことが重要であり、そのために、消費者の目線による対話の機会を更に充実させていきたいと考えております。

 当会では、今年度より、昨年度まで全国各地で行っていた「生命保険懇談会」を「せいほ意見交換会」と改め、各地域の消費生活相談員の方々との連携を強化することといたしました。従来より、「生命保険懇談会」等を通じて、消費者行政の責任者等との意見交換を実施してきましたが、それに加え、より幅広くお客さまの声を吸収していく観点から、相談員の方々が日頃お持ちの問題意識について意見交換を行ってまいります。

 また、消費者の声を経営に反映させることを目的として、当会内に設置しております「「消費者の声」事務局」において、当会に寄せられた「苦情・相談」・「意見・要望」や裁定諮問委員会における外部有識者のご意見等を集約・分析し、会員会社間で共有化しておりますが、こうした取組みをより一層充実してまいります。

 本年4月の金融ADR法の施行に伴い、現在、当会は「指定紛争解決機関」の指定を得るべく、申請の手続きを行っております。従来より、生命保険相談所においては、中立的な立場から、さまざまな相談・苦情をお伺いし、会員会社に対する苦情解決の依頼や和解のあっせんを行うとともに、弁護士・消費生活相談員等で構成する「裁定審査会」による紛争解決を行ってまいりました。今般の指定取得の申請に伴い、消費者の目線を重視した相談、苦情、紛争解決の機能の発揮に一層努めてまいります。


2.人口構造の変化に対応した公的保障を補完する私的保障の担い手にふさわし
  い行動


  少子高齢化・人口減少の進展が社会経済・国民生活一般に対して深刻な影響をもたらすことになれば、生命保険事業にも深刻な影響が生じることになります。こうした社会の変化に対し、将来を楽観することも、また悲観もすることなく、現実を直視して、公的保障を補完する私的保障の担い手にふさわしい行動をとってまいりたいと考えております。

 生産年齢人口の減少による影響は、社会全体の生産性の向上により、その影響をカバーすることができます。 生命保険事業においても、 業務の標準化や IT技術の活用により、生命保険の信頼およびクオリティを下げることなく、生産性を向上させるとともに、お客さま等の手続きに関するご負担を減少させる取組みを検討してまいります。例えば、診断書の標準化・電子化への取組みを進めてまいります。

 生産性の向上は、事業に従事する者が、意欲をもって仕事に励むことによっても達成できます。 生命保険会社の役職員約34万名における仕事と生活の調和(ワークライフバランス)を、コストではなく、将来に対する投資と位置づけ、より一層の促進に努めてまいります。

 子どもはわが国の将来を支える社会の宝です。従って、少子化の潮流を食い止めなければなりません。そのためには、社会全体で子育てを支えるという視点が重要であり、社会の一員として、育児環境の整備という点において社会に貢献してまいりたいと考えています。また、家族団らんの時間や地域で過ごす時間の確保という視点からも、ワークライフバランスの促進に努めてまいります。

 次世代の子ども達に豊かで安心な生活環境を残すため、より一層の環境保全に取り組んでまいります。


3.生命保険事業における適切な事業環境の整備

 生命保険事業が国民生活の安定を支える社会保障システムの一翼を担い、その社会的役割と責任を果たすためには、適切な事業環境が整備されることが必要です。

 現在、国際会計基準審議会(IASB)では、保険負債の時価会計に関する検討が行われております。生命保険は、保険群団を形成してリスクを分散し、長期にわたり保障を提供する商品であり、生命保険事業の財務諸表はこうした事業活動を適切に反映するものでなければなりません。事業の特性を適切に反映した会計基準が整備されるよう、関係各方面への働きかけを行ってまいります。

 第174回通常国会に提出された郵政改革法案は 、政府が議決権の3分の1超を常時保有する日本郵政株式会社がかんぽ生命の議決権の3分の1超を常時保有し、政府によるかんぽ生命の経営への関与が継続すること、また業務範囲等に関して届出違反があった場合の主務大臣の権限が「勧告」とされ、現在よりも実質的に規制が緩和されること等、公正な競争条件の観点から懸念が残ると考えております。こうした懸念が解消されないまま、かんぽ生命の限度額引き上げや業務範囲の拡大等が行われることは容認できないと考えており、引き続き関係各方面への意見表明等を行ってまいります。

 

 平成22年7月6日、最高裁において、遺族が年金形式で受け取る生命保険金に対する所得税の課税の取消しについて判決が下されました。この判決を踏まえ、課税取扱が変更されれば、生命保険会社で取り扱っている同種の商品に加入され、年金を受取られているお客さまについて、税金が還付される可能性があると考えられます。 
 当会としましては、今後、税務当局宛に課税取扱について確認を行い、お客さまの立場に立って、適切な対応を行ってまいります。

 

 以上、協会長就任にあたり、所信の一端を申し述べました。繰り返しになりますが、生命保険事業に課せられた社会的役割と責任を果たし、現在および将来にわたり、国民の皆様のご期待に応えるため、全力で諸課題に取り組んでまいる所存です。皆様方のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。





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