高等学校の授業展開例

教材をどのように活用するかの授業展開例のご紹介

教材「社会保障制度と保険のキホンについて学ぼう!」作成にあたって

宮崎三喜男 主任教諭

東京都立国際高等学校
宮崎三喜男 主任教諭

「社会保障を考えることは、自分の人生を考えることである」。授業を始める際、このように話をしますが、生徒たちはどうもピンとこないようです。高校生にとって社会保障や保険は縁遠く、また未来の話であると考えている傾向にあり、イメージがつかないのも当然でしょう。しかし社会保障や保険なしに人生を語ることはできません。社会保障や保険のことを正しく理解し、そしてどのように自らの人生を送りたいかということを社会保障や保険の視点から考えることが出来る生徒を育てていく必要があります。

本教材は、この2つの視点を学ぶことが出来るように作成しています。授業の導入では「雨の確率が40%のときに傘を持っていくかどうか」という身近な事例を使い、リスクについて考える工夫をしています。次に社会保障制度の中でも大きな割合を占める社会保険をしっかりと理解してもらえるように、「保険の仕組み」についてイラストを作って説明をし、また現在課題となっている社会保障制度の財源にも触れています。そしてワークシートの最後は民間保険の役割を踏まえた上で、自助・共助・公助の最適な組み合わせを考えさせる課題の構成になっています。

ワークシートの最後にある課題は、グループでディスカッションをしたり、ロールプレイを行ったり、レポートを書かせたりと、アクティブラーニングを意識した授業方法を取り入れることをイメージしています。言葉にしたり、文字にすることで、生徒の考え方も整理され、理解が深まることが予想されます。

公民の授業で最も大切なことは「どのような社会をつくっていくのか」を考えることではないでしょうか。本教材のポイントは、社会保障や保険の制度を理解するだけでなく、この「どのような社会をつくっていくのか」や「どのような人生を送りたいのか」ということを主体的に考え、社会に参画する力を育むことができる点にあります。

社会保障制度とは、何かあったときに社会全体で支え合うシステムであることは言うまでもありません。しかし、その前提のもと、社会保障制度を維持するために民間保険などの「自助」、社会保険などの「共助」、租税を財源とする「公助」の最適な組み合わせを考えることは、まさに中央教育審議会において提示された「将来の変化を予測することが困難な時代を前に、現在と未来に向けて、自らの人生をどのように拓いていくことが求められている」力を育むことが出来ます。

マニュアルでお勧めする授業展開例

段階 時間 学習内容(○)・学習活動(☆) 指導上の留意点(□)
導入 5分

【1 リスクを考えよう】

明日の天気予報、雨の確率は40%です。あなたは出かけるときに、もし雨が降った場合に濡れないよう傘を持っていきますか?それとも、雨は降らないと思い傘は持っていきませんか?

○上記の質問を通じて、リスクとは何か・リスクに対する備えについて理解した上で、人生には様々なリスクがあり、当該リスクに備える仕組みとして「社会保障制度」があることについて理解する。

☆上記の質問への回答を記入し、どちらの回答にしたか挙手したり、回答を選んだ理由について発表したりする。

□「リスク」とは「望ましくないことが発生する可能性」であることを説明した上で、社会保障制度が「人生の様々なリスクに対して、社会全体で助け合い、支えようとする仕組み」であることを理解させる。

展開1 10分

【2 社会保険と公的扶助】

○社会保障制度の中心となる「社会保険」と社会保障制度の最後のセーフティネットである「公的扶助」の基本的な仕組みについて理解する。

 

【社会保険】

○「社会保険」は「保険」の仕組みを使った制度であること、および、「保険」の仕組みについて理解する。

☆「『保険』の仕組みとは?」の図も確認しながら、学習する。

<発問例>
「保険」とは何でしょうか。また、「保険」がなかったら、
リスクに対する備えはどうしたらいいでしょうか。

【公的扶助】

○「公的扶助」の基本的な仕組みについて理解する。

☆「参考資料【資料2】」も確認しながら、「公的扶助」について学習する。

□本教材活用マニュアルP3【補足②】を参考に、貯蓄と保険の違いを理解させる。

展開2 5分

【3 社会保障制度の財源】

○急速に進む少子高齢化に直面している日本では、社会保障制度の財源問題が課題であり、社会保障制度の持続可能性を確保するためには、自助・共助・公助のそれぞれについて理解し考えていくことが重要であることを理解する。

☆社会保障給付額の推移に関するグラフ等も読み取りながら、学習する。

<発問例>
みなさんがお年寄りになったら、年金はどれくらいもらえる
でしょうか?

□少子高齢化による社会保障制度の財源への影響について理解させる。

□社会保障制度には、「自助」・「共助」・「公助」という考え方があることを理解させる。

展開3 25分

【4 自助と民間保険】

○以下の点について理解する。

  • ・「自助」の手段には様々あり、「自助」の一つの手段である「民間保険」は、「社会保険」と同じ「保険」の仕組みを使っていること
  • ・「社会保険」と「民間保険」の違い
  • ・「民間保険」の種類と役割
  • ・社会保障制度の持続可能性を確保するために、「自助」・「共助」・「公助」を適切に組み合わせていくことも考える必要があること

□「自助」の一つの手段である「民間保険」の仕組み・役割等について理解させる。

□「自助」・「共助」・「公助」を適切に組み合わせていくことの必要性について理解させる。

☆「参考資料【資料3】・【資料4】」も確認しながら、上記「○」の内容について学習する。

<発問例>
民間の保険はどのような役割を果たしているのでしょうか?

課題 皆さんは、持続可能な社会保障制度を形成する上で、「自助」・「共助」・「公助」をどのような割合で組み合わせることが望ましいと思いますか。また、なぜそのような割合が望ましいと考えたのですか。「老後の生活費の準備」をイメージして考えてみましょう。

☆上記の課題について、グループやクラスディスカッションを通じて、意見に相違があることも理解し、自らの意見を積極的に発表する。

<発問例>
どのような考え方が良いか話し合ってみましょう。

□「自助」・「共助」・「公助」をどのような割合で組み合わせることが望ましいか、また、その理由について、「老後の生活の準備」をイメージしながら考えさせる。

□参考情報として、「自助」・「共助」・「公助」の組み合せ方についてのアンケート調査結果を説明する。

まとめ 5分

○将来の社会を創る世代として、持続可能な社会保障制度の在り方について課題意識を持ち続ける必要があることを理解する。

☆授業後に、課題についてのレポートを提出させる。

□社会保障制度は、主権者が身に付けるべき知識の一つであることを理解させる。

ページトップへ戻る