エッセイ入選


1999年エッセイ・入選

『見えないけれどパートナー』

埼玉県 K・Tさん
36歳 (パート)


  「近々離婚するので、生命保険の見直しをしたいんです」サラリとこう言えるようになるまで、本当に色々な所をくぐり抜けたきた。夫の嘘と別居、二年間たっぷり悩み、苦しんで、私はずいぶん強くなった。私一人でも、子どもたちをきちんと育て上げよう。自分の老後のことも、自分で考えていこう。私が私の人生を設計し直すのだ。でも、どうやって。
 家のこと、再就職、課題は星の数ほどあるけれど、まず、将来の安心が欲しい。そう思って営業所へ電話した。「少々混み入った問題なので、プライバシーを守って下さる、知識豊富な方にお願いします」という虫のいい要求に応えて、営業所リーダーの女性が来て下さった。親身に話を聞いて下さり、「まだ小さいお子さんのために、医療特約はフル装備にしましょうね」と小さなコンピューターを操り、ご自身のお子さんにかけた保険のことまで教えて下さった彼女。これまでは夫の定期保険に「妻型」としてくっついていただけだった私の保障だけど、こんど受け取る証券には、契約者、被保険者として私の名前が堂々と記される。受取人は私の子どもたち。
 これからの日々は決して平坦ではないだろう。でも私は、生きていくって、いろんな道を通るのだ、という事をもう知っている。歩き易い道の時こそ将来への備えをしておけば、役立つ時は必ずやって来る。その助けが確実な約束ならば、どんなに嬉しいことか。
 新しい人生のパートナーは、目には見えないけれど、私が自分の力で得た保障。支えられているから、自分らしく生きていかれる。でもいつか、そんな素のままの私を、認めてくれる人に出会えたら― と夢見ることも、忘れない。