エッセイ入賞


2001年エッセイ・入賞

『わぁー明るい!』

兵庫県 冨岡和子さん
52歳(主婦)

 十五夜の月が七つにも八つにも見えた。「これは変だぞ」そう言えば、見慣れた新聞も読みづらくなっていた。慌てて眼科へ……。
 綺麗な女医さんが、暗い部屋であちらこちらへと目の玉を動かさせての検査の結果「白内障ですね。手術しか治す方法はありません」とさらりと言った。なんと十日も入院しなくてはならないらしい。予定外の大出費である。子供の大学の授業料、車の車検、甥の結婚……目白押しに大金が私のため息と共に出て行こうとしている矢先のアクシデントである。
 やっと五十歳になったばかりの私が白内障なんて……。例の美人の女医さん曰く「年齢に関係なく、なる人はなります」とまたまたさらりと言ってのける。眩しいライトの中での手術。金属でできた眼帯をさせられて三日目。そーと眼帯をはずした途端、わぁー世の中ってこんなに明るかったの! 叫びたくなるほどだった。しかし、入院費が心配。思わず気持ちは暗くなる。 
  そんな時に、ふと思いついたのが生命保険の入院給付金。恐る恐る保険会社へ電話をしてみると、意外にも白内障のような簡単な手術でもケースによっては給付金が支払われるとのこと。じゃあ、私のケースは……。営業職員さんが親切に問い合わせをしてくれた結果、きっちり入院給付金がいただけることになった。
 ああ、よかった。夫の顔も息子の笑顔もはっきり見える。夜空に輝く満月も今度は一つだけくっきりと見えた。
「わぁー明るい!」