2001年エッセイ・入選
『愛の保険』
栃木県 高井彩乃さん
14歳(学生)
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生命保険は、私のような子供には、全く関係ないものだと思っていた。その保険が、死んでしまった時におりる保険だという事くらいは、分かっていた。私の家族の中で、生命保険をかけているのは、父一人だけだ。母はもう何年も、専業主婦だ。父の働きで、私の家の生活が成り立っている。
「ねぇ、誰がお父さんを生命保険に入れたの?」
何だか嫌だった。父が死ぬのを待っているみたいだったからだ。
「お父さんが、自分でだよ」
「えっ?」
父は、母と結婚して、すぐに、生命保険に入ってきたそうだ。
「家族ができたから、何かあったら、困るもんな」と言ったらしい。
父は、家族のために、生命保険に入った。よく考えれば、死んでしまった人は、保険金を受け取る事ができない。みんな、愛する家族のために、生命保険に入っているのかもしれない。
自分が死んだ後の事まで考えているなんて、さすがお父さん。もちろん、お父さんに何かあったら困るけれど、しばらく、私たちが、生活していけるようにという思いやりが、とても嬉しかった。
生命保険というと、あまり、いいイメージを持っていなかったが、愛の保険なんだと思い直している。
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