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                 2002年エッセイ・入選 
                『おじいちゃんからずっと続いた 
                プレゼント』 
                福岡県 高岡はるみさん 
                  (主婦) 
              
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         私が結婚した年に母が急死し、父はがっくりと気落ちしていました。やがて私に長男が誕生。ニ年後に次男が生まれ、少しずつ父は元気を取り戻していきました。実家に行ったとき、父はずい分昔に入った証券を見せて「自分が死んだら孫二人にこれで本を買うように」と言いました。「本」に父がこだわっていたのは、十二歳で父親を亡くし妹たちを学校に行かすために働き続けて、本を買う余裕も読む時間すらも無かったからです。私は父に「縁起でもない。お母さんの分まで長生きして」と言いました。 
           母の死から六年。急性心不全で父は亡くなりました。残してくれた保険金はわずかでしたが、本を買うのには十分すぎるものでした。私は父の言葉通り幼い子どもたちに「おじいちゃんからのプレゼント」といって絵本や童話を渡していました。 
           子どもが成長するにつれ児童書から、日本文学全集、世界文学全集と変わっていきました。大学生になると、それは専門書になりました。常に本に囲まれた生活でしたので二人とも読書好きの大人になりました。子どもが家を出て行った今、それらの全集は私の手元にあります。私は、子どもたちの読んだ本を改めて読み直しています。 
           いつの日にか、子どもが結婚し子を持ち、その子が成長したら、これらの本を読んでくれるようにと願っています。 
          「ひいじいちゃんからのプレゼント」として。  
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