エッセイ優秀賞


1994年エッセイ・優秀賞

『責任感の証明書』

青森県 吉田満 
36歳 (会社員)


  数年前に結婚して、生命保険の受取人の名前を父からカミさんにした。彼女は専業主婦が希望だったので、カミさんの掛けていた保険も、支払者を自分に変更するのと一緒に、受取人を自分にしてくれた。不思議と、法律で定められた婚姻届を役所に出した時より、生命保険の名義の変更の方が、結婚したんだな、と言う実感が感じられた。
 独身時代には、生命保険なんてそんなに必要ないと思っていた。しかし大切な人が出来て、いざ結婚をしてみると、まだ子供こそいないが家庭に対する責任というものを考えるようになってくる。その時一番に考える事は、やはり家族の幸せであり、安定した生活の確保ということである。もし、自分に何かあっても、家族にだけは不自由な思いはさせたくない、そんな気持ちが生じてくる。
 それまでは、文字どおりたんなる保険として、せいぜい病気か怪我でもした時の小遣いくらいにしか考えていなかった。それが、自分自身の責任と言う事を真剣に考えるようになって、はじめて生命保険の重要性が分かってきた。婚姻届より生命保険の名義を変更をした時の方が、結婚したという実感を感じたのも、そのせいかもしれない。
  そういう意味では、生命保険こそ、家庭を持つ者の責任感の証明書、と言えるのではないだろうか。

寸評
審査員・嵐山光三郎
 「婚姻届よりも生命保険の名義を妻あてに変更したときのほうが結婚したという実感を得た」というのは、その通りなんでしょうね。ほくにも同じような経験があります。