1996年エッセイ・入選
『おノロケ生命保険』
群馬県 西田尚美さん
31歳 (主婦)
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「パパは結婚したとき、私の将来の為にって、勝手に生命保険に入ってくれたの」
「勝手にって?」
「会社から帰ってきて、何か書類を渡されたのよ。そしたら、それがパパの生命保険で、パパって頼りがいがあるっていうか、やっぱり男はこうでなくっちゃ、と思ったワ」
私の母のおノロケは、何故か生命保険が引き合いになる。何度も繰り返し話す所をみると、よっぽど嬉しかったんだろう。
先日、母の実家へ遊びに行った。久しぶりに会うお婆ちゃんは、外見も喋り方も、やっぱり母にそっくりだ。
そのお婆ちゃんの口から、
「お父さんが生命保険に入ってくれたから、助かるよー。 嬉しかったねぇ一」 と、恩と同じようなノロケが出たものだからその場にいた皆がドッと笑ってしまった。
我が家の生命保険は、ノロケ話と縁が切れない。
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