株式会社かんぽ生命保険の新規業務の届出について

2023年10月3日

一般社団法人 生命保険協会

会長 清水 博

当会は、郵政民営化に関し、当会の特別会員である株式会社かんぽ生命保険(以下、かんぽ生命)と民間生命保険会社の共存共栄による健全な生命保険市場の発展を実現する観点から、日本郵政株式会社(以下、日本郵政)保有のかんぽ生命株式の完全売却による「公正な競争条件の確保」や、日本郵政グループと民間生命保険会社が双方の強み・特徴を認識し適切に補完し合うこと等を郵政民営化のあるべき姿として提示してまいりました。

今般、2023年10月2日に、かんぽ生命より「一時払終身保険の発売」を内容とする新規業務の届出について公表されておりますが、これは一生涯の死亡保障と貯蓄性を併せ持つ、かんぽ生命としては従来にないタイプの商品です。一時払終身保険は消費者が契約時に保険料を一括で払い込み、保障が終身にわたって続くため、消費者が契約を検討する際に信用リスクを重視する可能性があり、かんぽ生命株式の完全売却による「公正な競争条件の確保」がなされていない中では、消費者の選好について大きく偏りが生じることが懸念されます。また、かんぽ生命の主力商品である養老保険が満期となった際の受け皿となることも想定され、間接的な政府出資に伴う万一の際の政府支援への期待感といった消費者の認識を背景とした販売増が見込まれることから、民間生命保険会社に対してもこれまでにない影響を及ぼすものと考えております。当会が従来から主張しているとおり、株式完全売却を通じた「公正な競争条件の確保」が実現しない中では、かんぽ生命以外の民間生命保険会社が公平性の担保されない競争を余儀なくされ、生命保険市場の活力が損なわれることで、国民経済の健全な発展・国民生活の向上が阻害される懸念があり、到底容認することはできません。

郵政民営化委員会におかれては、郵政民営化法において、新規業務の届出に際しては「他の生命保険会社との適正な競争関係を阻害することのない」ようにすることが求められていることに則し、今般の一時払終身保険の新規発売が市場や民間生命保険会社の経営に与える影響について慎重に調査審議いただくとともに、その判断の根拠や市場に与える影響の見通し等について開示いただくなど、より合理的かつ透明な運営がなされることを要望いたします。

なお、かんぽ生命の新規業務においては、一昨年、郵政民営化法上の上乗せ規制が緩和され、認可制から「届出制」へ移行されました。かんぽ生命に対する実質的な政府出資が残された状況のまま、昨年4月販売開始の「医療特約の改定等」、10月開始の「契約更新制度の導入等」、今年4月の「学資保険の改定」と、届出制移行を契機に、適正な競争関係等への影響が懸念される新規業務が活発化しており、現状に業界として憂慮しております。

改めて当会としては、民間生命保険会社との「公正な競争条件の確保」の実現に向けて、日本郵政が保有するかんぽ生命株式の完全売却に向けた適切かつ具体的な道筋が早急に示され、着実に実行されることを強く要望いたします。

以 上