2025年 年頭所感
一般社団法人 生命保険協会
会長 永島 英器
令和7年の新春を迎え、謹んでお慶び申しあげます。
昨年は、元日に発生した令和6年能登半島地震や全国各地で発生した大雨等、ここ数年と同様に自然災害が相次いだ年でした。被災地域の皆さまが安心して過ごせるよう、一日も早く復興が進むことを、心よりお祈り申しあげるとともに、生命保険業界としても、引き続き被災地の皆さまに寄り添った対応を進めてまいります。そのような中、日本経済においては、17年ぶりの日銀による政策金利の引き上げに伴う「金利のある世界」への回帰や、34年ぶりの日経平均株価の史上最高値更新、33年ぶりの5%を上回る賃上げの実現等、デフレから脱却し「成長と分配の好循環」を実現する道筋が見え始めた一年でもありました。
私たちが歩みを続ける限り、社会にも経済にも変化は常に起こり続けます。絶え間ない変化の中においても、相互扶助の精神のもとでお客さまの人生に寄り添い、これまでと変わらない確かな安心をお届けすることが生命保険業界の社会的使命です。このような強い決意のもと、本年も、昨年7月の協会長就任時に申しあげた次の3点を軸に、引き続き積極的に取組みを進めてまいります。
1.顧客本位の業務運営の推進
生命保険業界が、確かな安心をお届けするという社会的使命を果たすうえでは、お客さまの最善の利益を追求する「顧客本位の業務運営」が最も重要です。本年も引き続き、経営トップ主導による取組み高度化を推進してまいります。
外貨建て一時払保険における販売・管理等態勢については、昨年4月に改正した各種ガイドラインを踏まえた取組みの浸透・定着を目的に、アンケートや意見交換を通じたフォローアップを実施いたしました。本年2月には代表者による意見交換会を開催する予定です。
また、「営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点」についても、昨年10月に会員会社の取組み状況や高度化に向けた対応を確認するためのフォローアップアンケートを実施いたしました。本年は、アンケート結果を踏まえ、2月に役員級、4月に代表者による意見交換会を開催してまいります。
2.国民一人ひとりの豊かな人生の実現に向けた取組み
長い人生を豊かなものにするためには、自分自身の価値観に応じてライフプランを描き、健康増進や資産形成、リスクへの備えについて学び、行動に移していくことが大切です。
これまで、生命保険協会は、「自助」の大切さと「自助」「共助」「公助」を適切に組み合わせていくことの必要性を国民の皆さまに理解いただくべく、保険教育に関する教材や動画コンテンツの作成に取り組んでまいりました。
「金融経済教育推進機構」が昨年8月から本格稼働していることや、日本損害保険協会・生命保険文化センターとの間で締結した「保険教育に関する包括連携協定」をふまえ、生命保険協会の保険教育に関する中長期的な取組方針を策定し、取組みの更なる高度化をめざしてまいります。
また、会員会社が負担するサービス導入コストの低減により、生命保険業界における公的個人認証サービスの利活用をさらに広げるべく、サービスを提供するシステムベンダーと生命保険協会で、システムの共通仕様を設定し、複数の生命保険会社向けにシステムの一括開発等を行う「協会スキーム」を整備しました。引き続きお客さま利便性向上に向けた取組みを実施してまいります。
3.持続可能な社会の実現に向けた取組み
気候変動をはじめとしたさまざまな社会課題が顕在化するなか、生命保険会社には、約400兆円の総資産を保有する責任ある機関投資家と生命保険事業を行う事業会社としての両面から、さらなる役割発揮が求められていると認識しております。
昨年9月には、ジャパン・ウィークス期間中に開催されたイベントに登壇し、「資産運用立国の実現に向けた生命保険会社の役割」をテーマに、生命保険協会における取組みについて情報発信を実施しました。
引き続き、生命保険業界として、資産運用立国実現プランにおける金融・資本市場の活性化等への貢献に向けた取組みを推進し、積極的に発信するとともに、ESG投融資やスチュワードシップ活動を通じて投融資先企業の企業価値向上を後押しすることで、持続可能な社会の実現に向け、さらなる役割を発揮してまいります。
また、「地球環境等の課題解決に資するハンドブック」を最新の動向をふまえ更新し、勉強会の開催等を通じて会員各社に対する情報提供を継続するとともに、生命保険業界のSDGs推進にかかる取組みに関する周知ツールにより、お客さまに生命保険業界の取組みを理解いただけるよう、積極的に発信してまいります。
これら3点の取組みの軸に加え、生命保険業界がお客さまからの信頼を維持し、健全に発展していくための基盤整備にも継続して取り組んでまいります。
今年の干支は「巳(み)」でございます。一説には、「巳」は、胎児の形から派生した象形文字を起源とし、「将来・未来がある」という意味を持つとのことです。折しも、昨年12月に公表された、与党「令和7年度税制改正大綱」において、令和8年の所得税について、わが国の未来を担う子育て世代を対象とした生命保険料控除の拡充が示されたところです。引き続き、未来世代へ希望溢れる社会をつなぐため、生命保険協会長として、全力で取り組んでまいります。
最後になりますが、本年が皆さまにとって素晴らしい一年となるよう祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。
以 上