生命保険協会長就任にあたって(所信)

2019年7月19日

2019年7月19日

一般社団法人 生命保険協会

会長 清水 博

今年5月1日、我が国は新しい元号になりました。生命保険協会は、明治41年の発足以来、明治、大正、昭和、平成、そして令和と5つ目の時代を迎えております。

これまで生命保険業界は、関東大震災や世界大戦、近年では東日本大震災をはじめとする大規模自然災害等の中にあっても、相互扶助の理念のもと一貫して安心を提供し、国民生活の向上を支えるべく取り組んで参りました。

そして現在では、全国23万名を超える営業職員、8万店を超える代理店等のネットワークを通じて保険商品を提供し、年間約19兆円の保険金等をお支払いするなど、社会保障の一翼を担う社会基盤として重要な役割を果たすまでに至りました。

また、生命保険業界は、約380兆円の総資産を保有する機関投資家として、我が国の経済活動の発展に貢献して参りました。

現在、我が国では、少子高齢化や人口減少等の大きな構造変化とともに、先端技術の進歩・普及や個人のライフスタイルの多様化が急速に進むなど、社会全体が大きく変化しつつあります。

そうした中、新しい時代においても、生命保険業界として、お客様からの信頼を獲得し、社会に役立つ業界であり続けるよう、今年度は次の2つを軸に取組みを進めて参ります。

1. 顧客本位の業務運営の一層の徹底に向けた取組み

生命保険業界が今後も社会の役に立ち続けていくためには、会員各社が顧客ニーズ等に寄り添う商品・サービスの開発、情報提供、販売・推奨、契約後のアフターフォローや支払いに至るまで、お客様の最善の利益を追求していく「顧客本位の業務運営」を徹底していくことが重要と考えております。

そのために、生命保険協会として、引き続き、業界課題の改善に向けた取組みを進めていくとともに、業界外部の声や自主ガイドラインの策定を起点としたPDCAサイクルや業界内外との対話等を通じて、会員各社の「顧客本位の業務運営」の徹底を後押しして参りたいと考えております。

2. 新時代における希望あふれる安心社会の実現に向けた取組み

(1)新しい時代の生命保険の役割の発揮

人類が初めて経験する人生100年時代と呼ばれる超長寿社会が到来し、リスクが多様化していく中、生命保険が社会に貢献できる領域は、ますます拡がっていくものと考えております。そこで、生命保険協会として、人生100年時代における生命保険業界の役割を検討し、取りまとめたいと考えております。

加えて、デジタライゼーションが急速に進展する中、業界全体のデジタル化の底上げを図るべく、海外の先端技術の活用事例等を収集し、会員各社に情報提供するなどして取組みを後押しして参ります。

(2)次世代教育への貢献

これまで生命保険協会では、生命保険文化センターと連携して、幼児から高齢者まで幅広い年代の皆様に、生命保険や生活設計等について理解を深めていただくための取組みを推進してきましたが、今年度は、その中でも取り組む余地の大きい小学生向けのコンテンツの作成を検討していきたいと考えております。

加えて、社会や産業の構造が大きく変化していく中、自ら主体的に考え、他者と協調しながら課題を解決していく力の育成が求められていることを踏まえ、生命保険協会では、例えば次世代を担う若者向けのビジネスコンテストに協賛し、社会課題を解決する新たな保険サービスを考えてもらうという次世代教育の機会提供も検討していきたいと考えております。

(3)事業の健全な発展に向けた基盤構築

お客様からの信頼を維持し、生命保険業界が健全に発展していくための基盤整備にも、継続して取り組んで参ります。

税制面においては、国民の皆様が必要とする多様な生活保障の準備を支援・促進するため、生命保険料控除制度の拡充を引き続き要望して参ります。

加えて、我が国の生命保険事業の特性を踏まえた国際金融規制や国際会計基準、国内規制のあり方等について検討を進め、積極的に意見を発信して参ります。

また、引き続き、ESG投融資やスチュワードシップ活動を通じて、投資先企業の企業価値向上や持続可能な経済成長に貢献して参ります。

なお、生命保険協会は、かんぽ生命における業務範囲の拡大や加入限度額の引上げ等について、中長期的に消費者利益を向上させるためには公正な競争条件の確保が不可欠であるとの考えのもと、市場への影響等を見極めつつ、必要に応じて意見を表明して参ります。

以上、協会長就任に際し、所信の一端を申し述べました。この一年、全力で取り組んで参る所存です。皆様におかれましても、一層のご支援ご協力を賜りますようお願い致します。

以 上