生命保険協会長就任にあたって(所信)
未来へと続く安心社会の実現に向けて
2021年7月16日
一般社団法人 生命保険協会
会長 高田 幸徳
新型コロナウイルス感染症を巡っては感染拡大から1年以上が経過し、今なお予断を許さない状況が続いております。ワクチン接種が進む一方で、変異ウイルスの流行等を背景とする感染拡大などもあり、社会や経済に大きな影響を及ぼし続けています。
また、あらゆる場面において感染防止が必要とされる中、国民の生活様式も変革が求められており、以前から日本社会が抱えていた課題を顕在化させることにもなりました。すなわち、デジタル化の取組みや働き方の見直しが加速し、ライフスタイルの多様化が一層進むなど、社会に急速な変化が生まれています。
さらに、我々を取り巻く環境としては、国内では人生100年時代の到来という社会構造の大きな変化の中にあり、また、SDGsや気候変動への取組みなど、持続可能な社会の実現に向けた取組みが世界的に大きな潮流となっています。これらの長期的に見据えるべき課題への取組みも求められており、その重要性は益々大きくなっています。
このように、取り巻く環境が大きく変化し、不確実で先の見通せない時代にあって、お客さま一人ひとりの人生をより豊かで健康なものとしていくために、安心を提供する我々生命保険業界の役割は、これまで以上に高まっているものと認識しています。そして、我々がしっかりとその役割を果たしていくためには、お客さまに寄り添って、真摯かつ誠実に向き合う姿勢が不可欠であり、顧客本位の業務運営をより一層推進していかなければなりません。
こうした認識のもと、ポストコロナの時代も見据えながら、お客さまからの期待にお応えしていくために、今年度は次の3点を軸に取り組んでまいります。
1. 新しい時代における生命保険業界の役割の発揮
新型コロナウイルス感染症の拡大という危機に直面し、誰も経験したことのない未知の対応が強いられる中、これまでも協会長を中心に生命保険業界一丸となって、保険金等を適切にお支払いするという我々の使命を着実に果たすべく、感染防止と業務継続の両立に取り組んでまいりました。保険料払込猶予期間の延長や保険金等の簡易支払い措置等の特別取扱い等を行うとともに、非接触でのお手続きを可能とするようデジタル化を進めるなど、会員各社において様々な取組みを行っているところです。
これらの取組みを模索する中で、生命保険業界の役割や意義も改めて問い直されたのではないかと思います。新型コロナウイルス感染症の拡大による不安が社会を覆う中、お客さまにご安心いただけるよう進めてきた様々な取組みは、ポストコロナの時代においても求められるものであり、またパンデミックに対する経験としても今後に活かしていかなければなりません。
今年度も、バトンをしっかりと引き継ぎ、新型コロナウイルス感染症の状況に細心の注意を払いながら、適時適切に必要な対策を講じていくとともに、新たな日常を踏まえた会員各社の取組みを後押ししてまいります。その一環として、業界全体でのお客さま利便向上に向けた取組みや危機対応の一助となるよう、これまでの新型コロナウイルス感染症に対する業界の取組みを報告書として取りまとめることを考えております。
また、このような変化の激しい時代だからこそ、顧客本位の業務運営がより一層重要になってまいります。ライフスタイルや価値観が多様化する中で、デジタル化等により利便性を高めるとともに、お客さま一人ひとりに真摯に向き合い、それぞれのご意向に合わせたサービスを提供していくことが求められています。ウィズコロナの時代もポストコロナの時代も変わることなく、お客さまに信頼され、確かな安心をお届けできるよう、引き続き顧客本位の業務運営の推進に取り組んでまいります。
2. 豊かで健康な人生の実現に向けた貢献
人生100年時代の到来に際し、生命保険業界の果たすべき役割は益々高まっています。すなわち、超長寿社会の中にあって、国民一人ひとりが人生を豊かで充実したものとするため、自ら考え、自ら将来に備えていくには、金融リテラシーの向上が欠かせません。これまでも、生命保険文化センターと連携しながら保険教育に注力しており、昨年度は高校生に焦点を当てて取り組んでまいりましたが、引き続き生命保険や生活設計等について理解を深めていただくための取組みを推進してまいります。あわせて、今年度はできるだけ多くの方に保険に関心を持っていただく機会を提供できるよう、アニメーションによるわかりやすい保険教育動画を作成し、幅広い層に向けて公開していくことも考えています。
また、長い人生をさらに充実させていくためには、健康な期間をできるだけ長く保つことが重要となります。SDGsの目標に掲げられている「すべての人に健康と福祉を」は、生命保険会社が事業を通じて貢献することが期待されるものであり、昨年度は認知症への取組みに注力してまいりましたが、健康寿命の延伸や高齢社会への対応について、引き続き長期的な視点で取り組んでまいります。
今年度は、この健康寿命の延伸や高齢社会への対応と、喫緊の課題となっている気候変動への対応について、有識者の知見を借りて我々の理解を深めるとともに、生命保険業界の取組みを多くの皆さまに知っていただけるよう、SDGsをテーマとしたオンラインでのシンポジウムの開催も考えております。
3. 事業の健全な発展に向けた基盤整備
環境が大きく変化する不確実な時代においても、お客さまからの信頼を維持し、生命保険業界が健全に発展していくための基盤整備に、継続して取り組んでまいります。
一つは、持続可能な社会の実現に向けた取組みとして、特に気候変動への課題に対し、我々も一丸となって取り組んでいかなければなりません。生命保険業界は機関投資家として重要な役割を担っており、ESG投融資やスチュワードシップ活動を通じた、投資先企業の企業価値向上や持続可能な経済成長への貢献に向けた取組みをさらに推進いたします。これにより、我々生命保険事業の健全な発展とともに、全世界的な課題であるSDGs目標の達成に向けて取り組んでまいります。
また、税制面では、国民の皆さまが必要とする私的保障の準備を支援・促進するため、生命保険料控除制度の拡充等を引き続き要望してまいります。会計面では、我が国の生命保険事業の特性を踏まえた国際金融規制や国際会計基準、国内規制のあり方等について検討を進め、積極的に意見を発信してまいります。
さらに、かんぽ生命における業務範囲の拡大や加入限度額の引上げ等については、中長期的に消費者利益を向上させるためには公正な競争条件の確保が不可欠であるとの考えのもと、市場への影響等を見極めつつ、必要に応じて意見を表明してまいります。
以上、協会長就任に際し、所信の一端を申し述べました。これらの取組みと顧客本位の業務運営の推進に不断の努力を重ねながら、お客さまからの信頼を得て、未来へと続く安心社会の実現に貢献していけるよう、この一年間、全力で諸課題に取り組んでまいります。皆さまにおかれましても、一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
以上
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