SDGsフォーラム~持続可能な社会の実現に向けた保険業界の役割~を開催 (2019.1.23)
一般社団法人生命保険協会(会長:稲垣精二 第一生命保険社長)と一般社団法人日本損害保険協会(会長:西澤敬二 損害保険ジャパン日本興亜社長)は、保険業界全体のSDGs達成に向けた取組みを後押しするため、2019年1月23日(水)にイイノホール(東京都千代田区内幸町2-1-1)にて共同で「SDGsフォーラム」を開催しました。
来場者からは、「本フォーラムが日本損害保険協会と生命保険協会のパートナーシップで実現したことはSDGsを体現していて素晴らしいと思った」、「SDGsと親和性が高い保険業界だからこそできることを追求してほしい」などの感想や期待が寄せられました。
オープニングスピーチ(日本損害保険協会 会長 西澤 敬二)
開会にあたり、日本損害保険協会 西澤会長から「SDGsは、あらゆる視点で社会課題を解決し、包摂的で持続可能な社会を実現するために、世界中の様々なステークホルダーが参加して策定された、いわば人類の英知の結集ともいうべき開発目標。我々企業が、「SDGs達成への貢献」と「企業の持続的な成長」を同時に成し遂げていくためには、さらなる創造性の発揮とイノベーションの実現が必要であり、特に重要となるのは「デジタルテクノロジー」と「パートナーシップ」である。本日のフォーラムをきっかけに、さらに保険業界の枠を超えた取組みにも発展させ、SDGsの達成に貢献していきたい」との挨拶がありました。
来賓挨拶①(金融庁 長官 遠藤 俊英氏)
続いて、来賓の金融庁 遠藤長官から「金融庁は『企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成による国民の厚生の増大を目指す』という金融行政の目的がSDGsの目標にも合致すると考えており、庁内に「SDGs取組戦略PT」を設置するなど、SDGsの推進に積極的に取り組んでいる。保険とSDGsとの関係に焦点を当てると、保険はその活動自体が持続可能な社会の実現、すなわちSDGsに関連づけられるものであると考えられる。本フォーラムを通じて、保険業界におけるSDGsの推進に関する議論が一層深まるとともに、引き続きSDGsの動きが日本経済の好循環の実現につながっていくことを祈念する」とのご挨拶をいただきました。
来賓挨拶②(日本経済団体連合会 副会長 永易 克典氏)
次に、来賓の日本経済団体連合会 永易副会長より「経団連では、デジタル革新を最大限に活用してSDGsを達成する新しい社会のコンセプトとして、「Society 5.0 for SDGs」を掲げており、昨年11月には、「Society 5.0-ともに創造する未来-」と題する包括提言をまとめた。保険業界のSDGs達成に向けた取組みは他の金融機関に比べて活発だと認識しているが、今後も機関投資家としてESG投融資の高度化を図ることはもちろん、SDGsの達成に資する商品開発を行うことで、変革推進のドライバーとしての役割が期待されている。SDGsの達成にはさまざまな機関の連携が不可欠であり、経団連としても、保険業界の皆様とも連携を図りながら「Society 5.0 for SDGs」の実現に向けて活動してまいりたい」とのご挨拶をいただきました。
基調講演①「SDGs達成に向けた日本政府の取組みと今後の展望」
(外務省 地球規模課題審議官 鈴木 秀生氏)
来賓挨拶の後、外務省 鈴木審議官による基調講演では、保険業界にとってのSDGsとして「商品開発」と「機関投資家としての役割」の2点を挙げ、「保険業界は、多様化する消費者ニーズに応じたきめ細やかな商品開発を行うことで、金融市場を活性化していくことが重要。政府としても柔軟な制度設計を可能とする取組みを進めていく。また、機関投資家としてSDGsを推進していくような投資行動を行い、積極的に情報開示を求めていくことは、日本の投資市場の刷新・活性化のために極めて重要。」と指摘されました。
さらに政府の取組みとして、昨年12月に決定されたSDGsアクションプラン2019の3つの柱である「Society5.0」の推進、地方創生、次世代・女性のエンパワーメントについて紹介するとともに、今後取り組むべき課題として気候変動や海洋プラスチック等への対応に向けたグリーンファイナンスの活性化、イノベーションの促進を掲げられ、「日本が途上国を巻き込んだ枠組みを作っていくためには、ビジネス主導による革新的なイノベーションが必要であり、保険業界にも参加・支援いただくことで日本全体としての取組みになると考えている。皆様と一緒にSDGsを進め、より良い世界、より良い日本社会を作っていきたい」とのご発言がありました。
基調講演②「SDGs達成に向けた民間セクターへの期待」
(CSOネットワーク 事務局長・理事 黒田 かをり氏)
続いて、CSOネットワーク 黒田事務局長・理事による基調講演では、「異常気象や災害の頻発、難民・飢餓人口の増加をはじめとする地球規模課題が深刻化しており、持続可能性が脅かされている」といったSDGs策定の背景について説明があり、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念や、SDGsを構成する5つの要素(5P:人間のPeople、地球のPlanet、繁栄のProsperity、平和のPeace、パートナーシップPartnership)、SDGsの17目標について紹介されました。
また、企業に寄せる期待として、「2015年9月に国連で採択された2030アジェンダでも、持続可能な発展に向けて民間企業の活動・投資、課題解決のための創造性・イノベーションが期待されている。企業の皆様には、経営理念をSDGsと統合して企業活動の中核に位置付け、共通価値を創造し、責任ある理論的な企業行動を取っていただくことを期待する。誰一人取り残さないために、地域社会を含む多様なステークホルダーとの対話やパートナーシップを心掛けていただきたい」とのご発言がありました。
パネルディスカッション「持続可能な社会の実現に向けた保険業界の役割」
(CSOネットワーク 事務局長・理事 黒田 かをり氏)
(外務省 地球規模課題審議官 鈴木 秀生氏)
(生命保険協会 会長 稲垣 精二)
(日本損害保険協会 会長 西澤 敬二)
引き続き、モデレーターに黒田事務局長・理事、パネリストに鈴木審議官を迎え、西澤会長、稲垣会長と共にパネルディスカッションを行いました。
西澤会長からは、SDGs達成に向けた損保業界の取組みとして、防災・減災に向けた取組みや技術革新への対応、国際保険市場への支援について紹介があり、「将来を見たとき、損保事業に最もリスクとチャンスをもたらすものは気候変動とデジタルテクノロジーの進化だと考えている。自然災害への対応は日本社会の大きな課題になってきており、従来にない発想と枠組みで取り組む必要がある。損保業界はデジタルテクノロジーの進化を活用し、関連するパートナーと共に、さらに安心で安全な世界を築くサービスや商品を開発することで、複雑な社会課題の解決に取り組んでいく。」との話がありました。
稲垣会長からは、お客さまのニーズに応じた商品・サービスを通じた安心の提供や、機関投資家としての経済成長への貢献といった、生保業界が果たしてきた役割について紹介があり、「人生100年時代が到来し、少子高齢化・人口減少が予想される中、健康寿命の延伸は国家的な課題だと認識している。生保業界はこの課題解決に向け、金融リテラシーの向上(Preparedness:準備)、テクノロジーの進歩を活用した保障の充実(Protection:保障)、予防の領域へのサービス拡充(Prevention:予防)といった3つのPを提供することで、一人ひとりが安心と希望に満ちた人生を過ごせる持続可能な社会の実現に貢献していく」との話がありました。
鈴木審議官からは、両業界の取組みを受け、「SDGsに掲げられる課題解決に向けては、コストではなくチャンスだというマインドセットが必要であり、両業界のこうした取組みがまさに重要である」との期待が寄せられ、「政府の役割は、日本の優れた取組みがさらなる成長・競争力の強化に繋がるよう、民間の取組みを後押しすることだと考えている。SDGs達成に向けて、G20、SDGsサミット、そして東京オリンピック・パラリンピックを控えた大事な時期であり、国民皆がSDGsに取り組むことが大事である」とのご発言がありました。
議論の最後に、黒田事務局長・理事から「社会の不確実性が高まる中、保険業界が果たしている役割やポテンシャルは非常に大きいと感じた。持続可能な社会を実現するため、保険業界の皆様にはさらに政府、自治体、NPOなどセクターを超えた連携による取組みを進めていただきたい」との総括がありました。
未来に向けた決意表明
両協会を代表して4名の若手職員が登壇し、本フォーラムに参加して感じた想いを述べた後、「SDGsを達成し、安心と希望に満ち溢れた持続可能な社会を実現することを誓います。」と決意表明しました。
クロージングスピーチ(生命保険協会 会長 稲垣 精二)
閉会にあたり、生命保険協会 稲垣会長から「ホモ・サピエンスが約20万年もの間絶滅せずに生き残ったのは、“未来を想像”して現在の行動を変え、“協力”することができる種だから」といわれている説の紹介があり、「SDGsは、持続可能な社会の実現に向けて私たちが向かうべきこの先の未来の方向性を示している。次世代、さらには、もっと先の世代の繁栄を支える持続可能な社会を想像しながら、人類の英知を結集・進化させ、産・官・学のパートナーシップを最大限に発揮することで、SDGs達成に向けて役割を発揮していこう」との挨拶がありました。