「人生100年時代に必要なリテラシーと金融業界の役割」シンポジウムを開催 (2019.5.28)

生命保険協会(会長:稲垣精二 第一生命保険社長)は、創設後初めて迎えた記念日「自助の日」(2019年5月28日)に、イイノホール(東京都千代田区内幸町2-1-1)にて「人生100年時代に必要なリテラシーと金融業界の役割」シンポジウム(共催:全国銀行協会・信託協会・日本証券業協会・日本損害保険協会、後援:金融庁・金融広報中央委員会)を開催しました。


来場者からは、「金融リテラシーへの関心が高まっている中、金融業界団体が一堂に会して、人生100年時代に求められる取組みを議論していて良かった」、「金融機関は単に金融リテラシーの向上を目指すだけではなく、消費者一人ひとりの生き方に寄り添ったアプローチをしていくことが有効だと思う」といった感想や期待が寄せられました。

主催挨拶(生命保険協会 会長 稲垣 精二)

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生命保険協会稲垣会長より、「生命保険協会は、5月28日を『自助の日』として制定した。社会環境が大きく変化していく中、従来型のライフプランではなく、一人ひとりが“自分モデル”のライフプランを構築していく必要性が高まっており、一人ひとりの希望する生き方に合った自助をどのように進めるかを考えることが重要になってきている。本日は、“自分モデル”を構築する上で必要な心構えやリテラシー教育のあり方、金融業界の役割について、幅広く議論し、情報発信していきたい」と挨拶しました。

来賓挨拶(金融庁 長官 遠藤 俊英氏)

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金融庁遠藤長官より、「国民の金融リテラシー向上は金融行政の最重要課題の一つである。長寿化や生き方の多様化等が進む中、生涯にわたって豊かな人生を送るためには、自らのライフプランに応じ、資産寿命を延ばすことを念頭にバランスのとれた資産のポートフォリオを構築していく必要がある。そのためには金融リテラシーの向上が不可欠である。金融業界にも、国民の金融リテラシーの向上に向けて、無関心層に興味を持ってもらえるような教材の作成やセミナーの開催等、創意工夫のある取組みを期待している」との来賓挨拶をいただきました。

業界団体挨拶(日本損害保険協会 会長 西澤 敬二氏)

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日本損害保険協会西澤会長より、「最新のデジタルテクノロジーを活用した新たな商品やサービスを開発することで、これまで以上にリスクの回避、損失の軽減につなげたい。それをより実効性のあるものにするためには、社会全体のリテラシー向上が不可欠であり、関係各所と連携しながら取組みを発展させたい」とご挨拶をいただきました。


基調講演「令和時代の社会課題と産業構造転換」
(ピクシーダストテクノロジーズ(株)代表取締役 落合 陽一氏)

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落合氏より、「インターネットに接続され、限界費用が少なくなった社会では、D2Cビジネスや配信ビジネスのように技術インフラを通じてコンテンツを販売するような、従来と異なる稼ぎ方が可能になる。また、“フォロワーが多くいる”、つまり“社会と接続されている”ことが、これから価値となっていくため、社会に対して自分が行っていることの認知度を上げていくことが必要になってくる」とご講演いただきました。

パネルディスカッション 「金融リテラシー向上に向けた金融業界の役割」

【パネリスト】
 全国銀行協会 会長 髙島 誠氏
 信託協会 会長 池谷 幹男氏
 日本証券業協会 会長 鈴木 茂晴氏
 日本銀行 情報サービス局長・金融広報中央委員会 事務局長 中川 忍氏
 生命保険協会 会長 稲垣 精二
  【モデレーター】
 フリーアナウンサー 魚住 りえ氏

 

中川局長より、「金融リテラシーとは、金融商品・金融経済の知識だけではなく今後の生活設計・プランニングも含めた知識を指している。高齢の期間が延びるのに応じて、資産を増やし、長持ちさせる工夫が必要であり、その意味で金融リテラシーが重要になってきている。当委員会が実施した金融リテラシー調査では、日本の成績は欧米に比べて10ポイント程低いという結果が出ており、本シンポジウムをはじめ、金融リテラシー向上に向けた取組みを進めたい」とのご発言がありました。


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続いて、鈴木会長より、「長寿化の進展等を踏まえると、自ら資産形成を行う重要性は高まっている。人生の早い段階から証券投資による安定的な資産形成を行うことが重要であり、証券業界としてもそれをサポートしていきたい。特に、リスクをコントロールするために有効な長期・積立・分散投資を促進するとともに、無関心層に対してはこちらから出向いて大学での出前授業を実施する等、普及啓発活動を通じて資産運用の必要性を理解してもらえるよう取り組みたい」とのご発言がありました。


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次に、髙島会長より、「資産形成に向けては、まず収支の管理を行い資産形成に振り向ける資金を確保することが必要である。銀行ではデータを活用して収支を見える化することで収支の管理をサポートしている。また、金融教育としては、アクティブ・ラーニングや自分ごと化してもらうことを目的とした教材を提供している。これからは就労、健康・医療、介護といった、金融以外のニーズについてもサポートし、銀行の役割をマネーコンサルティングからパーソナルコンサルティングへシフトしていきたい」とのご発言がありました。


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また、池谷会長より、「人生100年時代では、資産寿命を延ばす、つまり資産を増やしながら徐々に取り崩すことがポイントになる。信託業界では、現役世代の資産形成には企業年金制度、退職世代から高齢期における資産管理についてはご家族等への資産管理の委託、そして、次世代への橋渡しとしては遺言信託や教育資金の事前承継といったように、それぞれの世代に応じた機能を提供している。一方、知識はあるものの具体的な投資行動に結びついていない現状もあり、行動に向けたあと一押しがポイントである」とのご発言がありました。


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最後に、稲垣会長より、「適切な貯蓄や投資による資産形成に加え、保険によるリスクシェアも大切である。また、生命保険業界としては、リスクへの対応をサポートするProtection機能に加えて、病気を予防するPrevention機能を発揮することで、QOLの向上に貢献し、豊かな人生の実現をサポートしていきたい。さらに、金融リテラシー向上に向けた無関心層へのアプローチとしては、実生活を通じて子供たちに楽しく学んでもらうことや、金融そのものを目的とするのではなく、自分独自のライフプラン、いわゆる“自分モデル”を構築するうえで自然と金融に関心を持ってもらうことが有効である」と発言いたしました。

閉会挨拶(日本銀行 情報サービス局長・金融広報中央委員会 事務局長 中川 忍氏)

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中川局長より、「人生が長くなれば、予期せぬ出来事が起こる頻度や確率が高くなるので、それに備えて、金融資産をできるだけ増やし、長持ちさせることが重要である。また、誰もが安心して金融サービスにアクセスできる「金融包摂」も社会的な課題になっている。金融に対する国民の関心を高めるにあたってはきっかけや入り口づくりが大切であり、アクティブに、楽しく、自分ごと化して学んでいただけるよう、金融広報中央委員会としても取り組んでいきたい」とご挨拶をいただき、本シンポジウムを締めくくられました。